ゲル状の自我
私には実体がない。
私には、私の容貌を思い出すことが困難だ。
私には、私という確たる自分という主義主張もない。
自分をおそろしくぶよぶよの何かに感じることもある。一方で、可愛らしいと思うときもある。
自分のことをとても頼りになる好ましい人間であると感じることもある。一方で、生きていくことすらままならない存在に感じることもあるのだ。
周りから規定された評価、そんなものは瞬間瞬間、環境で移ろいゆく。
それにすがりたくなるときもあるが、すがれるほどの度胸もない。
自分が下す評価がもっとも恐ろしい。
いつだってどこに投げ込まれるかわからないという不安のなかで生きてきた。与えられた、流れ着いた環境から逃げる度胸がないのなら、順応するしかないからだ。
かといって順応できるほど器用じゃないので、徐々に自分が溶けてよくわからなくなってしまった。
私は自分をゲルのようななにかだと感じる。こんな状態のものを、信じらるのだろうか。明日の自分は形を保っていられるのだろうか。
いつかどろどろに溶けて何もかもを崩してしまいそうだ。
自分の容貌を思い出したい。