aikoの話

aikoの愛は恐ろしい。

何もかも受け入れて、ずっと好きでいて、ずっと待っていられる、まさにヘビーな愛だ。ああ最高だ。最高。風になってでもあなたを待っている。よくわかる。

 

私がaikoで一番好きな曲は、“キラキラ”だ。こんなに悲愴な曲はないと聴くたび思う。

 羽が生えたことも
深爪した事も
シルバーリングが黒くなった事
帰ってきたら話すね
その前にこの世がなくなっちゃってたら
風になってでもあなたを待ってる
そうやって悲しい日を越えてきた

どうしようもなく悲しい歌詞だ。“あたし”は過去に囚われたまま、ただ“あなた”を待つ。どこかの部屋で。ただただ待つ。

 

待ってるねいつまでも
今日は遅くなるんでしょう?
一人寂しくない様に
ヘッドフォンで音楽聴いてるね

いやいやaikoさん。あなたね、他にもいるでしょ。そんな小さな部屋から出ようよ。ヘッドフォン外して、外に出ようよ、思わず泣きながら肩を揺さぶりたくなる。でもaikoは拒むのだ。  

 もっと心躍る世界がすぐ隣にあったとしても乱れたあなたの髪に触れられるこの世界がいい-milk

外になんてでたくない、このままでいい、ここで待っていると。その強情さと視野の狭さが、まさに自分を見ているようで居たたまれなくなってしまう。

 

この人じゃないとだめではないとわかっていてものめり込んでしまう危うさ、よくわかる。頭で理解しつつも止められない。その乖離。怖い状態だ。気がどうかしている。でもね、そうね、一度落ちたら止められないよね。

 

そんなに重いくせに、今目の前にある愛を信じられないなんて残酷な話だ。“えりあし”を聴いて悲しくならない女性はいないと言えるほどに後悔という後悔が浮かんでくる曲だ。

真っすぐな優しさに 胸が痛いと言った
輝くあなたの希望に 息が苦しくなった

相手がまっとうであればあるほど、自分の空洞が浮かぶようで、そのアンバランスさがよくわかる。

  

ぶったりしてごめんね 愛しくて仕方なかった
ねぇ 泣き真似してごめんね 困った顔が見たくて

そして あなたの背中が遠ざかり
最後に気付く儚き愚か者

 ああああわかるよ、自分の好きが相手の好きを上回るとやっちゃうよね。本当によくわかる。頭ではわかっているのに。そしてずっと後悔する、こんなループもうやめたいよね。

 

眠れない夜ずっとaikoを聴いているとだんだん気が狂いそうになってくる。私のなかのaikoが息をし、確かに存在する実感がある。そんな夜を繰り返していたら、彼女は育ち、そしていつか私の理性を追い越してしまう。

それでも私はaikoが大好きだ。要らない感情だなんて切り捨てられない。

 

 あなたが泣いている事
今は解らないふりして ずっと話そう
水平線が見えた 優しい世界の始まり
誰も今のあなたを責めたりできない-beat

後悔するようなことも、愛がアンバランスなことも、責められるようなことではないのだ。どうしようもなくなるときは止められない。だから私はaikoを聴く。恐ろしい愛だったとしても、それでも私は私のなかのaikoを消すなんてできないのだから。